セキュリティを生業とする私が、働き方改革したくて不退転職した話

明けましておめでとうございます。

早速で恐縮ですが、新年のご挨拶は短めに本題へ。

退職、そして転職。でも少し違う。

2017年12月末にNTTコミュニケーションズ(以降、NTTコム)を退職いたしました。そして2018年1月、NTTセキュリティ・ジャパン(以降、NSJ)へ転職いたしました。

私はNTTコムから出向という形で、もともとNSJで業務していましたので職場は変わりません。レンタル移籍から完全移籍へ、という感じでしょうか。

形の上では退職と転職の手続きはあるにはあったのですが、一般的な退/転職とは言えないかなと。ということでエントリは「"不"退転職」とさせいただきました。「不退転」の覚悟で挑んだという意味合いも含めて。

その覚悟を両社(NTTコム、NSJ)に寛大に受け止めていただき、円満な関係の中、上長のみなさまや会社の仲間、そして家族の理解も得て、多大なるご協力のもと、本日こうしてご挨拶させていただいています。本当にありがとうございます。

※ この先も会社に対するネガティブな発言はほぼないです。本記事はポジティブ路線ですので、悪しからず。

どうしても実現したかった"働き方改革"

働き方改革というと、残業を減らすとか、リモートワークだとか、そういう方面に行きがちですが、それよりもっと大切なことというか、本質的には、「自分が働きたいように働けるのか」ということだと思っています*1

これは、政府が示した「働き方改革実行計画

雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
単線型の日本のキャリアパスを変え、再チャレンジが可能な社会としていくためには、転職・再就職など新卒以外の多様な採用機会の拡大が課題である。転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立できれば、労働者にとっては自分に合った働き方を選択してキャリアを自ら設計できるようになり、企業にとっては急速に変化するビジネス環境の中で必要な人材を 速やかに確保できるようになる。雇用吸収力や付加価値の高い産業への転 職・再就職を支援することは、国全体の労働参加率や生産性の向上につながる。そのため、官民一体となって、転職・再就職者の採用機会を広げる方策に取り組んでいく。

の中の「自分に合った働き方を選択してキャリアを自ら設計」が該当するかなと。

自分に合った働き方を選択

私の場合、新卒での就活時は進みたい道が定まっていなかったため、様々な分野の業務を経験できそうなNTTコムを第一志望とし、なんとか就職できました。そこから色々な経緯があり6年前にセキュリティの世界に転がり込みました。

ログ分析、レスキュー、サービス開発、アナリストチーム立ち上げ、それに伴うDevOpsの推進、海外SOC連携などの業務を経験し、良くも悪くもこの世界にどっぷりはまってしまいました。そしてセキュリティの道で生きていくことを決断し、「自分に合った働き方」として今回のキャリアチェンジを実行に移しました。

キャリアを自ら設計

「キャリアを自ら設計」という点では、NSJのセキュリティアナリスト業務についてその評価設計をさせていただけたのは非常に幸運でした。そして、その評価者あるいは被評価者として当事者意識を失わないためには、自らがその体系の中に飛び込むべきであろうという想いも、今回の決断を後押ししています。

ちなみに、ここで言う「キャリアチェンジ」とは、単に所属する会社が変わる、仕事が変わる、という話ではなく、給与や肩書きなどを含む処遇全体がステップアップすることも意味します。

また、今回の件は、「とある一人のセキュリティ人材*2がキャリアチェンジした」という意味だけでなく、NTTグループにおいてセキュリティ人材としてのキャリアチェンジが可能であること(可能な制度が整っていること)を示すことによって、このあとに説明するいくつかのメッセージが世の中に伝われば良いなとも思い、このブログ記事を書いています。これらのメッセージはもしかするとセキュリティ業界に限ったものではなく、専門性の高い仕事全般に言えることかもしれません。

メッセージ1:「働き方」の選択肢が多い方が良い人材を獲得しやすい

「尖った人材を会社にとどめておくには、従来のキャリアパス以外に専門的な生き方を担保するためのキャリアパスも選択肢として用意しなければならないのだ。福利厚生が充実し、それなりの給与が支払われているだろうNTTグループでさえも、そうせざるをえないくらい人材市場が変化しているのだ。」

まずひとつめとして、今回のキャリアチェンジがそういうメッセージになりうるのではないかな、なったらいいな、と。色々な企業の人事担当さんに響けば嬉しいなと思っています。(NTTコムにもスペシャリティを持った人材の登用制度はあるにも関わらず、あえてNSJを選択したのは、NTTコムグループとしてだけではなく、NTTグループ全体の営みとして、より本気度の高さを伝えられるかもしれないと思ったからです。)

念のため、誤解のないように書いておきますが、企業における従来のキャリアパスがダメだと言う気は全くありません。あくまで、選択肢として、政府が言うところの「単線型の日本のキャリアパス」的に働くだけでなく、途中でキャリアパスを変え専門家として進んでいける道もあると良いよねと言う話です。

私に関して言えば、NTTコムで歩んできたこれまでのキャリアは全て今に生きていますし、しっかり評価もしていただけていました。(運が良かった面も多分にありますが…私にとっては本当に良い企業です。なので、今回の決断は本当に悩みましたし、正直なところ「裏切る」みたいな感覚があります…サッカー選手の完全移籍なら「移籍金」という形でお返しも可能かもしれませんが、そういうのないですからね…何か考えて全力で恩返しせねば。)

メッセージ2:もっと気軽に「働き方改革」を

先に挙げた「働き方改革実行計画」では、一旦退職して全く別の企業へ転職することを想定した内容になっていますが、企業グループ内でキャリアチェンジというのもあって良いのではないでしょうか。もっと楽な気持ちで自分のキャリアパスを変えられる仕組みとして、全く別の企業へ移るよりも将来のことを考えやすいですし、大切な家族の理解も得られやすいかなと。少なくとも私はそうでした。

セキュリティ専業の会社が多いわけではなく、セキュリティ人材は国内の様々な企業に所属していますので、企業内でのチャレンジの機会が増え、それを活用する人が増えてくると、業界の空気が変わるんじゃないかなと思うのです。その流れはもっと広い波及効果を生み出せるはずです。

セキュリティに生きると覚悟を決めた人たちが、さらに価値の高い成果を世に出し、そのビジネスをもっと拡大させることができれば、セキュリティ業界全体で別の分野からもっとたくさんの人材を迎い入れられるようになるでしょうし、そうやって市場規模が大きくなれば、起業*3や、別の分野との融合を目指すなどのもっと尖った形で、様々な人材・企業が力を発揮できるようなチャンスが広がっていくのではないでしょうか。

もちろんすでにそういった尖ったチャレンジをしている方々がいることも理解していますが、日本のセキュリティ自給率は低く、お金がすぐ海外に流れてしまうので、持ち分が小さくなりがちなのかなと。新しい海外のセキュリティソリューションを導入したのに使いこなせず、またすぐ次の別の何かに手を出すより、国内の優秀なセキュリティ人材をしっかり雇ったり、そういう人材をきちんと獲得している企業の協力を得た方が上手くいく!という認識になっていって、もっと日本の市場・人材に対して投資する流れになればいいなと。(とはいえ、素晴らしいセキュリティソリューションもありますし、人がいれば何とかなるものでもないのでバランスは重要です。一方で、海外進出企業は海外で優秀な人を雇うこともありますので、そううまく行く話でもない現実はありつつも…)

もちろん外資系企業が日本の人材にたくさん投資いただいてもよいのですが、実際に自分のチームのメンバーや知り合いがそっちに行ってしまうのを見ると、なぜか悔しい気持ちになります…日本の企業でもそういうことできるんだぜ、って言いたい。待遇だけではなく、働く環境とか、風土とか、絶対に負けたくない。

メッセージ3:若者に憧れを抱かれるような仕事に

そして、若者にとって今回のように専門領域で戦って行くというキャリアパスが、彼や彼女の人生における魅力的な選択肢の一つとなるようにしていきたいです。

せっかく学生時代にセキュリティを学んでも「なんか面白そうな就職先ってないよね」なんて思われたら目もあてらません…

私は今35歳ですが、もう少し下の世代も、もし今の生き方に悩んだ時に、今回私が選択したようなキャリアチェンジが人生の選択肢となるように。そしてその新しい道を選んだとき、後悔させないようにしなければならないなと。

自身の生きる道を決断し、チャレンジするパパやママ含め、大人たちの背中ってかっこよくないですかね?憧れてくれる子供達が増えたら嬉しいなと。

息子がユーチューバーになるかセキュリティ人材になるか*4で悩んでくれたら死ぬほど嬉しい。どちらも勧めるかは別にして 笑。

この選択の先にあるもの

私にとってこの選択が吉と出るか凶と出るかはわかりません…こうしてブログに書いたり、ツイートしてたりしているうちに、何かの弾みで炎上して灰になったりする可能性もあるというか、何かあれば確実に一瞬で吹き飛ばされるような小さな存在ですが、それでもセキュリティ業界、あるいは企業で働く様々な人にとって何らかのプラスになるといいなと思いこの記事を書きました。(記事に書いたくらいじゃ何も変わらないのが現実かもしれませんが、書かないともっと何にも無いので。)

結び

セキュリティのお仕事が子供たちの憧れの職業となり、より多くの人に認められ、日本を守り、海外へも影響を与え、世界の平和に少しでも貢献できることを願ってやまないし、私もそういう仕事がしたい。先人たちが積み上げ、現役世代が推し進め、新しい世代がさらに発展させるであろう技術や仕組みで、ノーベル平和賞を目指すくらいの心意気で。(おおげさ 笑)


最後にお約束のセリフを。

サラリーマンだって、平和を守れるんだ!



*1:働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。|サイボウズ」の前向きな皮肉が好き。

*2:別の課題ですが、そもそもセキュリティ人材って何よ?というところは整理してみたいな。語る人によって違いすぎる…今回の記事はその定義が問われない内容なのでご容赦を。

*3:すごく憧れる。数年前に友人らとTechCrunchスタートアップバトルに応募したのはいい思い出。撃沈したけど…

*4:大人になったらなりたいもの|第一生命保険株式会社」では学者・博士、先生なんかも人気みたいなので、セキュリティ分野の博士や先生が増えると嬉しいですね。